誰かと私の備忘録

日々の仕事と暮らしからの気づきや学びを「備忘録」として、同じ悩みや境遇の方向けにシェア◆おすすめ書籍も紹介◆大手企業にてマーケティング20年、現在はDX推進課長◆家ではポンコツ、妻と息子たちに教わることばかり◆昭和平成カルチャー好き◆日本マーケティング協会マイスター|生涯学習開発財団認定プロフェッショナコーチ|DXパスポート

【ジョブチューン】に学ぶ、企業やブランド価値を高める2つの要素

この備忘録を共有したいのは

企業価値を高めたい経営企画部門の方や、ブランド価値を高めたいマーケッター

この備忘録を読めば

『ジョブチューン』を通じて、企業やブランドにファンを増やすために【物語】と【透明性】が大切なことがわかります

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<目次>

はじめに

『ジョブチューン』というテレビ番組が好きです。飲食店や飲食メーカーが、自信ある10品をエントリー。名だたるレストランオーナー、シェフたちが、その品を合格か不合格かジャッジするのがメイン企画です。審査員にボロクソに批評されて可愛そうだと思うことも多々ありますが(価格やターゲットを無視した批評の場合が多いように感じます)、登場する企業にとっては相当プラスの大きい番組だと思います。

『ジョブチューン』が企業のファンを増やす理由

【物語】を魅せることが出来る

企業がその商品にどれだけ熱い想いで取り組んでいるのか、ミニプロジェクトXみたいな感じで取り上げてくれるので、とても観ていて共感が生まれやすい。さらに、合格するかハラハラさせる実況やBGMで、思わず応援したくなります。
たとえばくら寿司の回で取り上げられた、各地域限定の『くらの逸品』というシリーズ。漁師の皆さんの想いを背負って作り上げる過程を通じて、くら寿司の企業理念や志がとても伝わってきました。
しかし、『宮城県閖上産赤貝』が不合格になってしまいます。希少で高価な閖上赤貝を回転寿司の価格で多くの生活者に提供するというチャレンジングな取り組みで、割れ貝を調達したり冷凍したりという工夫がありましたが、審査員いわく「冷凍したことで本来の美味しさが大きく損なわれている」とのことでした。

それを受け、担当の方が「産地の人に謝らんといかん。想いで商品を出してはいけなかった。本物は本物で出さないとブランドを棄損する…」と絞り出す学びのコメント。さらに社長の「絶対に無理、難しい、出来るはずないよと笑われることにチャレンジして超えていくから独創的な商品が生まれる。これからに繋げるのを改めて今決意した」という逆境での力強く前を向くコメントに、私もメーカーの開発に携わる者として、強く胸に響くものがありました。

「合格」の商品は勿論プラスの広告効果がありますが、上記のように、「不合格」の商品こそが【物語】を生み出します。一度不合格になった商品のリベンジもたまに登場し、これが物語として実にわかりやすく、ドラマティック。

印象に残っているのは、以前ローソンが生ガトーショコラのリベンジに挑んで、見事成功した時のこと。審査員の方がしばしコメント出来ずに目頭を押さえ、「(審査員の言うことを)素直に受け取ってすぐに何度も実行するということは出来そうで出来ない。それをやって、ここまでの味に持っていくってことは素晴らしい・・・こんな部下が欲しいなって思いました」と涙ながらに称えていました。ローソンの皆さんはもちろんですが、茶の間の私も感動しました。

【透明性】を伝えられる

素材や製法へのこだわり、実際に作っている風景、そしてなにより従業員の泣き笑う顔が見えるということで、普通なら生活者に伝えられないことまで【透明性】を持って伝えられる。演出はもちろんあるとはいえ、これもこの番組の大きな魅力だと思います。

これからのマーケティングのキーワードとして私は【透明性】があると思っています。予測不能なVUCA(Volatility:変動性 / Uncertainty:不確実性 / Complexity:複雑性 / Ambiguity:曖昧性)と呼ばれ、モノを見る目がシビアなZ世代が購買層になってくる時代。企業からの上っ面だけのメッセージでは、その良さを信じてもらえません。
赤城乳業が『ガリガリ君』10円値上げを、社長をセンターに据えて全社員で謝罪するというインパクトの強い広告でユニークに訴求したのは2017年。そのあけっぴろげな姿勢が注目された、その頃からこのような流れは始まっているように感じます。

私の好きなアパレルブランドのマザーハウスは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を理念とし、お客様に、現地工場の職人と一緒に世界で一つだけのエコバッグやストールを作るツアーを実施しています。途上国の生産現場に入って生産者と会話しながら、どのように製品が出来ていくのかを体感できる。すごく透明性のある取組だと思います。

同じくアパレルで、「徹底した透明性」を企業理念に掲げて2010年代後半に注目されたのはサンフランシスコ発の D2C(Direct to Consumer)ブランド、エバーレーン。公式サイトですべての商品の生地やファスナーなどの素材、工場での人件費、関税、輸送費 の原価まで公表し、利益が一目でわかるという、驚きの透明性。しかしながら、従業員解雇や伴う労働組合とのやりとりまでTwitterで公開していく過程で、逆にブランド価値が下がっていってしまう事態になりました。透明性を追求していくことは、容易でない側面もあります。

スーパーの野菜売場では生産者をアピールするものも多く、YouTubeでは嘘偽りの効かない一発録りの『THE FIRST TAKE』や、スッピンからの変貌をありのまま見せるメイク動画も人気。

これからは【透明性】はマーケティングやブランディングに不可欠。【透明性】のない企業やブランド、コンテンツは淘汰されていくと思います。

まとめ

今回の備忘録

企業やブランドの価値を高め、ファンを増やすためには、今後【物語】と【透明性】が重要。『ジョブチューン』はそのことを教えてくれる、すごいコンテンツ!

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ちなみに、文中登場した「マザーハウス」関連の記事はこちら。