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【ネタバレ考察】『口に関するアンケート』映画と原作小説との違い

この備忘録を共有したいのは

『口に関するアンケート』映画を観た、あるいは原作小説を読んだ人

この備忘録を読めば

映画と原作小説の違いについて、整理して理解することができます

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<目次>

はじめに

映画『口に関するアンケート』が2026年7月3日に公開になりました。

原作を読んで、映画化されるとどんな風になるのか興味があったので、さっそく観に行ってきました!

本記事では、映画と原作小説それぞれについてレビューします。ネタバレを含みますので、注意してください。また、感想はあくまで超個人的なものですので、ご了承ください。

『口に関するアンケート』あらすじ

心霊スポットとして有名な墓地の「呪われた木」についての噂を聞き、大学生たちが肝試しに出かける。

しかし予想外の事件が起こり、翌日にはグループの一人が行方不明になってしまう。
その日を境に、彼らの身の回りには不可解なことが起きるようになり…。

20分で読める原作小説、90分で観終われる映画

背筋さんの原作小説はなんと、A7サイズ(手のひらサイズ)の極小本で僅か63ページ。2,30分もあれば十分読み終わる量です。オムニバスの1編を読み終わる、ってのとはなんか違う。ちょっとした時間にさくっと1冊を全部読み切れちゃうという、新鮮な体験でした。鞄で持ち運ぶのも軽いし、なんなら私はポケットに入れてました。これからこのサイズの豆本小説、流行るかも。

そして、映画は89分と、これも短い。トイレが近い私も安心です。

いずれもそれぞれにとても面白くて、とにかくタイパが良いコンテンツだと感じました。とても得した気分です。

注意!以下、ネタバレあり

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原作小説の感想

原作小説の驚きと伏線

私は、映画よりも先に原作小説を読みました。短い物語の中で、下記のように何度も驚きがありました。

肝試しに行ったのは二組

皆が一緒に肝試しをしたのかと思いきや、翔太・竜也・美鈴・杏とオカルト研究部(オカ研)の堀田・川瀬の二組が別々に肝試しに行っていた。

たしかに、冒頭の翔太の発言から、明らかに「同じ場所に行ったことのある、他人に対しての話しぶり」ではあった。刑事さんに対して話しているにしては、変な違和感があって。

翔太は「夏の夜の山」って言ってたのに川瀬が「コオロギ」って言ったところで、これは別に動いているなということはなんとなくわかりました。読み進めると、オカ研の2人が本体の翔太・竜也・美鈴・杏の後に行ったことがはっきりしました。

杏が木に呪われたのは翔太のせい

最初に肝試しした4人組のひとりである杏が、木の呪いを受けて死に追いやられてしまう。その理由が翔太のあさましい考え(呪いの木に、竜也を殺してほしいと願う)だったということも、最後の翔太の発言でわかって驚きました。

でも、翔太と達也と杏の三角関係と、翔太がこの肝試しの言い出しっぺだったにもかかわらず嘘をついていることは美鈴の最初の発言で既にわかっているし、翔太が竜也が呪いの木の前を通らなかったことに異常な反応を示していることもその前の竜也の発言でわかっているんですよね。前半から十分な伏線が張られていたなぁと思います。

少なくとも、この木が「呪われた木」でなく、人の呪いを成就させる「呪いの木」であることを後半、美鈴や堀田が強調しているので、最後の翔太までいかずともここで気づきたかったなー。

全員が集まり、呪いの木の前で語っていた

てっきり警察の事情聴取だと思いきや、呪いの木の前に全員(翔太・竜也・美鈴・堀田・川瀬)が揃って発言していた、スマホに残されていた音声だったとは。

小説の最後のアンケートでその真相を知り、驚きました。しかし、冒頭の翔太の発言の表題がわざわざ【201908262310.m4a】というAppleの音声ファイル形式になっていること、時間が23時代と非常識に遅いこと、そして次の川瀬の発言【20190826231⑨.m4a】までの時間差が9分しかないことなど、伏線は張られていました。

全員が木の周りで集団自殺

アンケートの問7でこの真相を知り、ゾクっとしました。たしかに、各人の発言終わりが不穏な感じだったり、文字色の仕掛けはあったのですが、この真相を初読で気づくのは難しいと思いました。知っていることを正直に話し尽くして、首を吊るタイミングが近づくに連れて文字色が徐々に赤色になるのですが(面白い仕掛け!)、最近自分自身が老眼にもなってきて、乱視もあるので、自分の目がおかしいのだと最初思い込んでいました笑。

ミステリー>ホラー

本作品は、モキュメンタリ―ホラー(ドキュメンタリーや記録映像の形式でフィクションを描くホラー手法)と評されることが多いですが、私はけっこう、このように伏線がちゃんと張られた謎解き的な面白さを感じたので、原作小説はホラーよりもむしろミステリー色を感じました。

堀田と川瀬はなぜ巻き込まれたか

ミステリー脳で読むと、オカ研のふたりがなぜ巻き込まれたのかは気になりました。杏が自分がなぜ木に呪われることになったのかを探るために翔太、竜也、美鈴を呼び寄せたというのはわかる。でも、堀田と川瀬は関係ない。

自分なりの考察としては、自分がどんな自分がなぜ自分が呪われたかの前に、そもそもなぜ木が呪いの力を持っているのかについても知りたかったんだろうなと。ふたりに、呪いの木の成り立ちと、どうして呪いの力を持つようになったかを語らせたかったのかなと。そんな風に思いました。

映画を観ての感想

映画と原作小説との違い

そんな読書体験をしたうえで、今回、映画を観ました。結論、とても面白かった。

原作がとても短く、削ぎ落された作品故に、映画化となるとどうなるんだろうとちょっと不安であったのですが、小説の20分と同じくらい濃密な90分で、心地よかったです。もちろん原作小説からの改変もありましたが、原作の良さを損ねたり、無駄な水増し感もありませんでした。両者の違いを、ここからは説明します。

キャラクターに体温がこもった

なんせ原作小説は短いですから、各キャラクターの細やかな人物象は理解できない。映画では、「あぁ、翔太ってこんな感じなんだ」と理解することができました。

特に、堀田と川瀬はいじめる側といじめられる側という設定が付加されていて、これはこれで物語のアクセントになっていて観やすかったです。杏を見て取り乱す堀田を内心であざ笑う川瀬、最後の「ぷぷぷ…」と笑いを噛み殺すシーンもとても良かった。

ちなみに「何やってんすか」と声をかけるのは原作小説では川瀬、映画では堀田。さらに小説と逆で映画では先に堀田が首を吊ってるからこそ、この川瀬の発言が活きてきます。

追加キャラクター

原作がある物語の映画化の場合、よく映画オリジナルのキャラクターが登場します。で、そのキャラクターが追加される必要性がなかったり、物語が面白くなるどころか原作の良さが失われたり…ということが残念なあるあるですが、今作においては、必要最低限で、原作の良さを守る追加になっていて、嬉しかったです。

我々の視点で物語を前に進めてくれる存在であり、かつ、「物事を〇〇だと決めて広める役割」を果たす大人の象徴である、中村獅童さん演じる刑事の草壁と、柄本時生さん演じる週刊誌記者の西。呪いの木に近づくにつれて大小の怪奇現象に遭遇していく草壁と、その草壁に最後に「死ねや」と呪いの木につぶやかれる西。二人も呪いの連鎖に巻き込まれたのは確実でしょう。

杏と言う人間がいない

その草壁が山中のコンビニの防犯カメラの映像を確認すると、3人しか映っておらず、なんと、竜也の彼女は美鈴…!

今、こう打っていてもさぶいぼがぞわっ。これは驚きました。原作小説を読んでいたから余計にかもしれません。まったく想像していませんでした。

草壁が学生課でチラシを見せてもらうシーンで、職員が「私にはよくわからない」と首をひねる。ここは強い違和感がありましたが、案の定、コンビニ防犯カメラのシーンの後に明かされた現物チラシの内容は、杏の写真があるはずのところに、呪いの木が映っているものでした。

さらに、その少し前の竜也の証言シーンでは、竜也が杏と美玲を言い間違えていた。

でも、思い返すともっともっと最初に小さな違和感はあった。最初、肝試しに向かう竜也を見送る美鈴と杏、霊感が強く不安そうな美鈴の肩を抱きさする杏のシーン、ポキポキカサカサと枯れた木の音がやたら耳に残ったんですよね。竜也の歩く音なのかと思っていたけれど、違うような気がする…。

この改変プロットの原型は背筋さん

実は、この映画の改変は背筋さんが原作小説の出版にあたって採用されなかった方のプロットに着想を得たとのことです。その、ボツとなった方のプロットでは「グループの一人は元々存在していなかった」そうで、それを今回の映画に活かしたと。いわば原作者のお墨付きのシナリオなわけで、原作小説同様に面白いわけだと納得しました。

翔太たちとオカ研の時系列が逆

原作既読勢としてもうひとつサプライズだったのは、途中で、川瀬がバイト仲間に肝試しでの体験談を話すシーン。そのバイト仲間こそが、翔太。これを観た時に、え!時系列逆!ってなりました。

でも、確かに川瀬と堀田が墓地を訪れた時に閉まっていた門が、翔太たちが訪れた時は開いていたのは後から思えばわかりやすいヒントでしたね。

ホラー>ミステリー

原作小説は少し怖さはありつつも、むしろ謎解き要素に面白さを感じていました。

が、映画は怖かった!『呪怨』『犬鳴村』などなどで有名な清水崇監督の円熟の技を堪能しました。肝試し後に登場人物たちが経験する、様々な恐怖体験のひとつひとつ。

竜也が襲われる蝉ファイナル、オカ研の二人がだべっているファミレスの店員の首、翔太や美鈴が目にする杏の姿、耳にする杏の声などなど…。

それぞれのジャンプスケア(映像や音響の突然の変化で観客を驚かせる演出)は絶叫するほどのものではないので、ホラー映画をそんなに観たことのない私でも心地よく?怖がることができました。ホラー映画って面白いなって思いました。私のようなホラー初心者の方にもおすすめです。

ちなみに清水崇監督は今後も7月に『だぁれかさんとアソぼ?』、9月には『八つ墓村』と、たて続けに作品公開が控えていて、凄い。怖がりゆえにホラーはこれまで敬遠していたけれど、観に行ってみようかな。

因縁話は怖くない(小中理論)

なお、ジャパニーズホラー(Jホラー)の礎を築いた脚本家であり作家の小中千昭さんがホラーとはなんたるかを体系的に纏められた「小中理論」をご存じでしょうか。その中で、「因縁話は怖くない」というものがあります。”理解できない不条理”こそが恐怖の本質だというのです。これに私はとても共感します。

ホラーは考察脳で観ない方が楽しめる

原作小説はホラーよりもミステリー要素を感じたと前述しました。それは、不条理でなく、理解して膝を打つ伏線が多かったからかもしれません。最たるものが、物語の胆である杏が呪われた理由の真相。「恋愛のもつれが背景にあり、翔太が竜也を呪ってくれと願ったのに、竜也は木の前を通らず、杏が通ってしまったから」と、とてもロジカルなものです。

それが、映画においては、杏は木の化身。翔太たちにとってはなぜか元々いたことになっているし、色々な場所でも現れてくる。不条理極まりない。それでこそ、「木」に「口」と書いての「杏」も怖さが増す。自分を呪いの存在として冷やかしにきたり呪詛しにきたりした人間を喰らう木なのでしょうね。って、ちょっと考察じみたことを書いちゃってますが(この記事のタイトルにも考察って入れてるし)、そもそも、ホラーはあまり考察脳で観ない方が楽しめるように思います。

原作小説で気になった、なぜ川瀬と堀田まで巻き込まれたのかについても映画では、ホラーってそういうものだよね、と気になりませんでした。怖いもの見たさでそんなところにいって、しかも話しかけちゃったりなんかしたら、そりゃ祟られるさ…みたいな。

図書館の美玲に起きた怪奇現象

不条理で怖くて特に印象に残っているシーンがあります。

図書館で、美玲が呪いの木について調べものをしている際に、背後に呪いの木と、首を吊った女が現れ、ぶらんぶらんと揺れる足が机の上の水筒を何度も倒してしまう。

そのシーンで、揺れる足の靴と、調べものをしている美玲の履いている靴が、たしか、同じ柄でした。揺れる足の靴は相当汚れていて見にくかったので自信はないですが…。揺れているのは杏だと思いきや…。そんな風に感じたこと自体がとても怖かった。

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その他、好きだった映画の演出

俳優さんたちの熱演

呪いの木をバックに語っていることがバレてはいけないので、各人の証言は黒背景の、ドアップで映されます。ドアップに耐えられるお顔の美しさもさることながら、その皆さんの熱演たるや。それぞれの心情がとても伝わってくる、繊細かつ心のこもった演技でした。

しかも驚いたのが、皆さんが初日にこのシーンを撮影されたとのこと。初日からトップギア!さらにさらに、美鈴を演じたME:IリーダーのMOMONAさんと川瀬を演じたTAGRIGHTの西山智樹さんは演技初挑戦だったとのこと。とてもそんな風には感じられませんでした。

ちなみに、舞台挨拶の動画を観ましたが、MOMONAさんは機転が利く面白い方ですね。今後、活躍の幅をさらに広げられることを注目したいと思います。そして翔太を演じられた板垣李光人さんは息子と観ていた『仮面ライダージオウ』ウール役の彼だったとは!驚きました。

杏を演じられた吉川愛さんは証言シーンはなかったのですが、憑依された杏の演技は鳥肌ものでした。憑依されていない時の杏とのギャップもすごくて。怖いのに美しくて、ぞくぞくしました。

エンディングの鼻歌

冒頭から、墓地に向かうドライブの車内で、その吉川愛さん演じる杏が鼻歌を口ずさんでいる。この鼻歌が、耳に残るんですよね!天真爛漫で男子ウケしそうな笑、杏らしい感じで。

で、杏がいなくなってからも翔太と美玲がその鼻歌を耳にしたりという怖い演出もありつつ、エンディングで流れたのがそのメロディーでした。こう来たか!と気持ちよかった。

共通しての感想

人間の決めつけの滑稽さ

原作小説と映画、いずれも読んで観たうえで、感じたのは「人間の決めつけは尊く、醜く、滑稽なものだなぁ」ということです。

作中でも語られるように、同じ石でも、道端の石ころだと蹴飛ばされる、お地蔵さんの形になると有難がって拝まれる、呪いの石と呼ばれると怖がられたり呪詛の対象にしたりする(小説では美玲が、映画では西が語っていましたね)。呪いの木も、元々は有難がって手を合わせられる存在だった。それがいつしか、噂によって呪詛を叶える呪いの木、霊が出る呪われた木となった。

現実の世の中も、大なり小なりそんなことだらけですよね。

奈良の鹿は奈良にいるから天然記念物だけれど、奈良から外に出れば猪や熊などと同じただの野生動物。

もてはやされていた芸能人やスター選手も、何かのきっかけでとたん、老害とみなされたり。

会社でも、良かれと思って導入されたルールやツールが悪評高い面倒なものとされていたりってこともあちらこちらにあります。

決めつけて、その対象を良きものにも悪しきものにもする。世の中のマジョリティがその決めつけを信じ込む。その対象は、いつしか本当にその決めつけそのものとなる。

目に見えない大いなる存在や抽象的な価値観を、理解できる像や象徴として可視化し、心の拠り所とすることは人間の尊い力だと思います。

が、その力を逆に醜く発揮していることもあるような。それは、滑稽だなぁと思います。

「口は災いのもと」

最後のアンケートで、「口は災いのもとだと思いますか?」と原作小説でも映画でも問われます。

私は、上述のように、決めつけを誰かに語り、伝播していく醜さ、滑稽さから、「はい」と答えました。

皆さんはいかがでしょうか。

でも、こんな風に「ネタバレ」しながら自分の感想考察を公共の場で綴っている私も同じかもしれないですね。

冒頭に記載しているように、「感想はあくまで超個人的なものです」。ご了承くださいませ…!

まとめ

今回の備忘録

モキュメンタリ―ホラー『口に関するアンケート』は、原作小説も映画も、いずれもとても面白いものでした。小説は20分で読み終え、映画も90分で観終われる。タイパの良さに大満足です。

背筋さんによる原作小説は、張り巡らされた伏線を答え合わせするミステリー要素も楽しい。清水崇監督の映画は、不条理な展開が怖くて、純粋にホラー映画として楽しめる。

人間の決めつけによる尊さ、醜さ、滑稽さについて考えさせられる作品でもありました。

怖がりな私でも大丈夫だったので、ホラー初心者の方にもおすすめだと思いました。これから、ちょっとホラー、開拓してみようかな。

おすすめの一冊

「目が」背筋

「口」の次は「目」!これまた、手のひらサイズのミニ本。よくもまぁこの短い中身に、あんな設定まで入れ込んだなぁと。しっかり二転三転、驚かされます。20分で読めますが、普通の文庫本と同じくらいの余韻を味わえます。『口に関するアンケート』がはまった人には、是非おすすめです。

「向日葵の咲かない夏」道尾秀介

今回の『口に関するアンケート』で強烈に印象に残るのが、「蝉」ですよね。今年の夏は、蝉の鳴き声を聞いたり、道端で蝉を目にする度に思い出してしまいそうです。

で、こちらも冒頭からの蝉の印象が強い、夏に読みたいホラーミステリー。決めつけるのは口は災いのもとかもしれないと思いつつも、あえて言います。「二度読み必至」。おすすめ。

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