この備忘録を共有したいのは
アイデアを考えることが必要な仕事をしているけれど、なかなか良いアイデアが思いつかないなぁと感じている人
この備忘録を読めば
おもしろいアイデアを思いつくために、最低限意識しておくべき姿勢、考え方がわかります
スポンサーリンク
<目次>
- はじめに
- アイデアは既知と既知との掛け合わせ
- 自分の中の”既知”を増やすことが第一歩
- ”アイデアを出したい分野以外の一般知識”を意識して増やす
- 掛け合わせて生まれたアイデアの具体的事例
- 「なんかかおもしろいな」と思う情報を貯めていこう
- まとめ
- おすすめの一冊
はじめに
『良いアイデアを考える為に、普段からでじきちさんが意識されてることはありますか?』
講演や研修に行くと、よく聞かれます。いつも答えているのは、
『常に、おもしろいと思う何かを探してること』。
なぜそんなことをしてるのか。本記事で説明します。
アイデアは既知と既知との掛け合わせ
さて、みなさんはアイデアはどうやって生まれると思いますか?アイデアは基本的に、何もないところから突然降ってきたり湧いてくるものではありません。アイデアは、自分の中の“既知(知っている情報)”と“既知(知っている情報)”との掛け合わせで生まれるものです。
かつてアメリカ最大の広告代理店だったトムプソン社の最高顧問ジェームス・W・ヤングさんが、1940年に『アイデアのつくり方』という書籍の中でこの考えを提言しました。「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。”製品と消費者に関する特殊知識”と”人生とこの世の種々様々な一般知識”との新しい組み合わせからアイデアは生まれるものである」と。
私は、単にくっつける・足し算するだけでなく、結合させる・化学反応させるというイメージの方がしっくりくるので、「組み合わせ」ではなく「掛け合わせ」という表現をしています。
自分の中の”既知”を増やすことが第一歩
さらにもう少し嚙み砕いて、「”アイデアを出したい専門分野に関する知識”と、”その他の分野に関する一般知識”の掛け合わせでアイデアは生まれる」と私は解釈しています。
たとえばお寿司屋さんであれば、魚に関する部位や安全性・味やさばき方などの知識は前者にあたります。寿司以外の中華やケーキ、コンビニ食などの知識は後者。広く飲食分野とみれば前者ですが、ガチンコの専門分野でなければ後者と捉えるのが私はおすすめです。
すし飯の他の食材に対する相性といった知識と、イタリアンのカルパッチョというメニューの知識を組み合わせることで、「カルパッチョ握り」みたいなメニューが思いつくかもですね。いきなり何もないゼロのところから「そうだ、サーモンに醤油じゃなくオリーブオイルをたらしてみよう!」とひらめくわけではなく、既知と既知を組み合わせてひらめくわけです。
人気のあるテーマパークとか、流行ってるテレビドラマとか、最新のデジタルツールなど、ありとあらゆる知識が後者。江戸時代をコンセプトにした内装にするとか、ロボットの板前さんなど、突拍子もないアイデアが生まれそうです。
つまり、良いアイデアを生み出したり、量産するためにまずやるべきは、自分の中にアイデアを生み出す掛け合わせの材料である“既知”を増やすことなのです。
なお、アップル創業者の故スティーブ・ジョブスもこんなことを語っています。「アップルがiPadのような製品を生み出すことができるのは、テクノロジーとリベラルアーツ(教養)の交差点にいることを常に心がけてきたからだ」。
”アイデアを出したい分野以外の一般知識”を意識して増やす
”アイデアを出したい専門分野に関する知識”を増やし、極めていくことはもちろん大切なことです。ただ、これについては誰もが必要性を理解しているところ。差がつくのはむしろ”その他の分野に関する一般知識”です。
「よくそんなアイデアが思いつくなぁ」と言われるアイデアマンは、えてして皆、専門分野以外の領域に博識なのです。”アイデアを出したい専門分野に関する知識”と掛け合わせる知識の幅が広く、引き出しが多いのです。
アイデア会議に性別男女多様なメンバーに参加してもらった方が良いのもこの理由からです。それぞれの参加者の持っている知識を掛け合わせるのです。
掛け合わせて生まれたアイデアの具体的事例
ネットフリックス創始者であるリード・ヘイスティングス氏は、『アポロ13』のビデオテープ延滞料金で40ドル支払うはめになったときに、「定額制レンタルビデオサービス」というアイデアを思いつきました。レンタルビデオ業界に関する知識に、「ジムなどでは定額制というビジネスモデルをとっている」という一般知識を掛け合わせたのです。
偉人の事例だけでなく小市民の事例も出しておくと、私は過去、口中清涼剤のブランドマネージャーをしていたことがありました。ある時、映画『風と共に去りぬ』を観ていたら、スカーレットオハラが、自分の酒臭さを消すためにコロンでうがいするシーンが出てきた。そこで、機能的な効果訴求が強かったそれまでの自社ブランドの広告を、香水をイメージさせる情緒的な内容に変えると、新しい層が獲得できて売り上げが大きく上がったということがありました。アイデアを出したい口中清涼剤分野の知識に、映画の1シーンという一般知識を掛け合わせて思いついたものです。
また、他の業種の広告で良いなと思ったコピーの表現を自分の担当ブランドに当てはめて作りこむこともよくやっていました。特に、スマホや住宅業界のコピーはパンチが強く、参考になる表現が多かったです。
なお、この掛け合わせをアイデア発想法として確立させたのが、無関係な言葉同士をランダムに強制的に掛け合わせる「強制結合」(「強制発想」「強制連想」)と呼ばれるものです。興味のある方は是非こちらの記事も読んでみてください。
「なんかかおもしろいな」と思う情報を貯めていこう
とはいっても、やみくもに一般知識を増やしていくのは退屈だし、気乗りしないものです。なので、「なんかおもしろいな」と自分が感じる情報だけでも、自分の引き出しに着実に貯めていくというのが私のおすすめです。
「最近なんかおもしろいと思ったことある?」とか「最近いいなと思った商品や広告ある?」と聞かれた時にすぐ、何かしら答えられると、アイデアマンに近づきます。
街を歩いていたりテレビを観てたり、普通に毎日暮らしている中でも、おもしろいな、ユニークだな、興味深いな、不思議だな、驚いたな、って感じるモノゴトはそこらじゅうにいっぱい転がっています。それらに気づくことが大切です。最初は難しいかもですが、意識してアンテナを張って引っ掛けることを続けていくと、じきに自然と、自分の中のアイデア発想の琴線に触れるモノゴトに気付けるようになります。
さらに、次のステップとしては、なぜそのモノゴトが自分のアイデア琴線に触れたのか。どこを面白いと思ったのか、不思議に感じたのか、驚いたのかなど、理由もセットで整理できるとGOODです。
このように、自分がおもしろいと思う情報を、なぜ面白いと感じたのかの理由とセットで頭に蓄積することを地道に続けていくと、自分がおもしろいと思うことの共通の特徴や構造、ルールみたいなものが見えてきます。これが、知らず知らずのうちに、その情報を掛け合わせる“センス”を身に着けることにもつながると私は思います。
そしてもちろん、いろいろな本を読むことは最も手軽に”既知”を増やす方法だと思います。
【実例】情報の貯め方
と、ここまで長々と書いてきましたが、いざやりだしてみれば、全然たいしたことではありません。
参考までに、私が先日、家族でコリアタウンに遊びに行った時のアイデア琴線に触れたモノゴトを紹介します。ちょっと恥ずかしいですが、こんなレベルで全然OKです!
①「大阪で2番目の安い•旨い!」というコピー
思わず「いや、1番やないんかーい!」と突っ込みたくなる。でも、2番でも凄いし、1番でない2番の味とはどんなものなのか、味わってみたくなる。マスターは誰が1番だと考えているのかなど、色々妄想してしまう。あえてのNo1を外した訴求、いろいろなことに掛け合わせることができるかも?
② ポン酢の自動販売機
「いや、尖ってるなぁニッチやなぁー!」ってこれも突っ込まずにいられない。「こんなのも自動販売機で売れるんだ」という驚きと、「はたしてどんな人がポン酢を自動販売機で買うんだろう、なぜスーパーでなく自動販売機で買う事情があるんだろう」という疑問。さらには、「ターゲットの数や購入頻度を考えた時に、ビジネスとして成立する利益が出るのだろうか」「そういえば、なんやこれって思うような中身のガチャガチャとかも近しい不思議さがあるなぁ」など、興味は尽きない。
「アカンかったら金返す!」も、社長?の実写を横に置き、言い方とフォントもあいまって吹き出し的な見せ方でパワーが増している。なるほどなぁ。
③ キムチが詰まったサンドイッチ
コリアタウンならではのわかりやすさ。コリアタウンから一歩外に出ればややキワモノ的存在とされそうなメニューも、この場所なら、逆に王道メニューの風格。売ってる場所で魅力は変わる、実におもしろい。あなたの提供する商品やサービスも、場所を選べば王道になるかも!?
まとめ
今回の備忘録
アイデアは、”既知”と”既知”の掛け合わせ。もう少し詳しく言えば、”アイデアを出したい専門分野に関する知識”と、”その他の分野に関する一般知識”の掛け合わせ。
両方の既知を増やすことが大切だが、特に、後者の一般知識を増やすことが重要。自分が「なんかおもしろいな」と感じる情報を、どこがおもしろいと感じたのかの理由とセットで貯めていくと、アイデアのセンスが磨かれていく。
皆さんも、是非、アイデア琴線に触れる”既知”を増やすのを意識してみてください。
余談ですが、アイデア琴線に触れた時、私がいつも福山雅治ガリレオきどって“実に面おもしろい”と小さな声で呟いているのは内緒です笑
おすすめの一冊
記事に共感いただいた方へのおすすめ本を毎回紹介します。
今回はなんといっても、本文でも登場したこの1冊。
「アイデアのつくり方」ジェームス・W・ヤング
はっきりいって、私もしかり、アイデア創出に関して持論を気持ち良さげに語ってる人の言う内容の本質は、ぜーんぶこの80年以上前に書かれた本の中にある。
わずか60ページにあとがきと解説を足しても100ページの薄い薄い本だけれど、新商品や新サービス、新規事業を生み出す仕事をしている人は絶対に一度は読んでおくべき名著です。アイデアを生み出す仕事をしていてこの本を知らないというのはちょっと恥ずかしいので、せめて存在だけでも知っておきましょう!