誰かと私の備忘録

40代なかば中間管理職おじさんが、マーケティングやコーチング、勉強中のDXをベースに日々の学びをシェアするブログ

サラダマック事件~顧客の声を聞いたのに~

こんにちは!でじきちです。

前回、「顧客志向」について書きました。今日もその続きみたいな感じで自分への備忘録も込めて書いておこうと思います。それは、「顧客が言うままに応えても、成功しないことが多い」ということです。読んでいただいている方の中にも、そんな経験をされた方もおられるのではないでしょうか。

<目次>

2006年サラダマック事件

こんな話をご存知でしょうか?有名な実業家、原田泳幸さんが日本マクドナルドの社長をされていた頃のお話です。

  1. マクドナルドのマーケッターが、お客様にアンケートをとって、どんな商品が欲しいか、聞いてみた。
  2. すると、「低カロリー」「ヘルシー」「オーガニック」といった健康志向の商品を希望する声が多かった。
  3. そこで、「サラダマック」という、野菜が摂れるヘルシーメニューを開発、気合を入れて新発売。
  4. しかしながら売上は不振!原田さんは即サラダマックを発売中止に。
  5. 逆にお肉たっぷりの「クォーターパウンダー」や「メガマック」を新発売したところ、これらが売れ行き好調!アンケートでヘルシーなものが欲しいと言っていた方々も平然とパクついている。

出典:マクドナルド広告等

ここから学びとされるのが、「生活者は本当のことを言えるとは限らない」ということです。キャッチーに「生活者は嘘をつく」と表現される方もいます。その理由としては、2つあると思います。

顧客の声をそのまま聞いても成功しない理由

①自分の「インサイト」を言葉にできない

「インサイト」とは、人を動かす隠れた心理。自分自身も気づいていない、その行動を起こす動機や本音。不合理なことが多い。例えば今回の例で言えば、我々がマクドナルドに行くのはそもそも、「ジャンキーなバーガーをガブリと食いつきたい」といったものが多いのではないでしょうか。「ヘルシーなものが欲しい」は健康に良いし、マクドナルドの他のメニューはジャンキーなものが多いから理にかなっているように見えますが、そもそも、マクドナルドに行くという行動の根っこにあるインサイトとマッチしないのです。

②他の対処と比較をせずに答えてしまう

健康でありたい、その為にヘルシーなものを摂りたいというのは、生活者の嘘偽りない声だとは思います。でも、それはマクドナルド以外で達成できるのではないでしょうか?むしろ、こんなアンケートに答えることになるまでは、マクドナルドにヘルシーなんて期待していなかったのではないでしょうか。マクドナルドしか無い世界ならいざしらず、我々は手軽にヘルシーなものが摂りたくなったら、サラダデリや野菜サンドやコンビニの惣菜などなど、色々な対処法がありますよね。ヘルシーランチに力を入れているお店も沢山あります。近しいところでは、サブウェイだって。競合が頭にない状態でコメントをもらっても、あまり意味はありません。

そんな理由で、顧客の声を鵜呑みにしてもいけないのです。むしろ、強いインサイトは行動に落ちるので、行動を観察する方が気づきがあると思います。アンケートではヘルシーなものが欲しいと言っていた方が、平然とてりやきマックに食らいついている。どうやら、インサイトは違うらしい・・・と気づいたかもしれません。もしかしたら、別のポイント、例えば「何故あんなに顎を触っているのだろう、ソースが垂れてないか気が散っているようだ、美味しく味わう阻害要因なのでは・・・」などといった問題に気づくことがあったかもしれません。

そしてもうひとつ意識すべきが、昨日の記事でも書いた「企業としての意志」です。自分たちのコア(存在意義)は何なのか?そこからはみ出た戦略を取るということは、良くも悪くも「変化」することです。それは、我々が成し遂げたい変化なのか。マクドナルドは、「ヘルシー」に変化していきたいのか。昔、ベンツが安っぽいスポーツカーやレジャー用などフルライン化に走ったことがありましたが、これも失敗に終わっています。自分たちのコアが何なのかをしっかりと認識しながら、応えるべき顧客の声を見定めていくべきだと思います。

新市場創造型の商品やサービスの場合

ちなみに、マクドナルドの場合は既存のアイテム追加というパターンでしたが、全く世の中にない新商品や新サービスを開発する際は、どうでしょうか。顧客の声にそのまま応えればヒットをかっ飛ばせるでしょうか。大方予想がつくと思いますが、答えはNOです、no no darlin'。むしろ、新しいモノゴトを扱う場合は、顧客の想像を超えないと、並み居る競合に勝つことは出来ません。私が昔、就職活動を行っていた時、バンダイの人事の方が「感動は相手の想像を超えて生まれる」と仰っていました。本当にその通りだな、と思います。顧客に不満を聞いたり改善点のアイデアを聞いたりしても、顧客の考え及ぶ範囲の答えしか出てきません。そして、そんなことはもうどこか他の競合が既にやっているか、やりかけています。生み出す側は、顧客の発想を超えなければならないのです。ウォークマンの無い時代にCDラジカセの不満を聞いても「外出中に持ち歩けない」なんて不満、出てきません。きっと「重たい」だとか「ラジオのチューニングがムズい」みたいな声が多かったと思います。ガラケーの時代にガラケーの不満を生活者に聞いても「ネットサーフィンが出来ない」なんて不満は出ないし、AKB以前のアイドルに「会いに行けない」なんて不満は出ない。「泊まれる本屋」BOOK AND BEDも、USJの「後ろ向きに走るジェットコースター」も、顧客の声にそのまま応えたのではなく、担当者が必死に考えて思いついたものです(彼らがどうやって思いついたのかも、またいつか共有しますね)。

ちなみに

今回のサラダマックのような経験、実は私もしています。昔、自分の担当していたブランドが、女性にインタビューをすると「PKGがおっさんくさくてダサいから買わない」「もっと洗練されたお洒落なデザインだったら買うのに」というわけです。そこで、女性向けの優しく洗練されたデザインの新製品を発売しましたが、女性たちは引き続き、おっさんくさいPKGの旧ラインを買うのです。何故なら・・・、やさしく洗練されたデザインの新PKGは、効果感が薄れてしまったからです。インサイトでは、彼女たちもしっかり効くもの、効きそうなものが欲しかったのです。

ちなみに私がサラダマック事件を初めて知ったのは、インサイトリサーチを追求する株式会社デコムさんとのお仕事の際でした。こちらの書籍、デコムさんの秘伝のタレともいうべきインサイト発見のプロセスが松本さんの軽妙な語り口で記されていて、面白いです。

 

原田泳幸さん、好きなビジネスマンの一人なのですが、昨日アタシ、平松愛理さんが好きだって書きましたが、実は谷村有美さんも好きなんですよね。MUSIC GUMBO、よく聴いてたなぁ。マッキーと結婚するんだとばかり思ってたのになぁ。昨日に続き、タイトルとも本文とも、まったく関係ございません。いや、無理があるか。そんな私の好きなバーガーは、「フィレオフィッシュ」です。

ではまた!

改めてセットで読むと、味わい深いものがあります。どちらも面白いですよ。