誰かと私の備忘録

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JAXAロケット打上中止会見からの「我が振り直せ」

こんにちは!でじきちです。

皆さん、日々失敗していますか。私はいっぱいしています。

JAXAのロケット試験機が打ち上げ直前に中止の判断をしました。JAXAの会見の中で、とある記者さんが「『中止』というが、今回の件は『失敗』ではないか」と質問し、「『中止』だと捉えている」というJAXAに対して「一般的にはそれは『失敗』といいます」と言い残して終わるというやりとりがありました。

気持ちの良いやりとりでないと思いました。でもこの記者さんを叩いたところで意味がない、「人の振り見て我が振り直せ」。自分も改めて気をつけよう、と思ったことを皆さんにもシェアします。

<目次>

JAXAと記者のやりとり

今回のJAXAと記者さんとの大まかなやりとりはこちらです。YouTubeで検索したら観ることもできます。

記者「『中止』と『失敗』についてもう一度確認したい。もやもやするもんですから。『中止』という言葉は、一般に、『意図的に止める』とか『計画を途中で意図してやめる』時に言います。今回はカウントダウンも続いているし、飛ぶはずの機体が飛ばないという状況だったと見えます。正体不明の異常が起きて、システムが正常に作動して止まったのかもしれないが、意図しない異常による中断、中止ということじゃなかったのでしょうか。つまり、意図的なものじゃなくて止まっちゃったということは、一般的には『失敗』じゃないかと思いますが、どうですか」

JAXA「どのような解釈をされるかは受け止めた方それぞれの受け止め方があると思うので、そうでないですとも言い難いですが、ロケットというものは、安全に止まる状態でいつも設計しており、その設計の範囲の中で今回止まった。『意図しない』というのはそういう設計の範囲を超えてしまう、そうじゃない状態になる、ということで、それはちょっと大変になると思います。今回はある種想定している中の話なので、失敗とは言い難いなと思います」

記者「わかりました。確認ですが、システム範囲内で対応できる異常だったけれど、起こるとは考えていなかった異常が起きて打ち上げが止まったということでいいですね」

JAXA「そうですね。ある種の異常を検知したら止まるシステムの中で、健全に止まっているというのが、今の状況です」

記者「わかりました。それは一般に『失敗』と言います。有難うございまーす」

「失敗」の辞書的定義

違和感が大きかったのは、記者さんがずっと「一般に」「一般的には」と言っていたことです。いや、それって誰が決めたの?と思いました。広辞苑で「失敗」を引くと、下記のようにあります。

出典:広辞苑無料検索

 

当たり前といや当たり前ですが、「うまくいく/うまくいかない」「しくじる/しくじらない」のラインが曖昧だと、「失敗」の判断は出来ないですね。「最終的に新ロケットの打ち上げを実現すること」「新ロケット試験機を2/18に打ち上げること」「事故を起こさず試験を終えること」「試験の結果がどうあれ、エンジンは使い回せる状態に保つこと」などなど、様々な視点や視座によって、JAXAの方がお話されたように、受け止め方は異なると思います。エジソンは「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」「成功するのに最も確実な方法は、常にもう1回だけ試してみることだ」と言っています。エジソンも、受け止め方の異なる指摘に当時煩わしく感じたことがさぞかし多かったのでしょうね。

固定概念を外す、言葉を具体化する

思い浮かべるのは、コーチングの場面です。メンバーに1on1でコーチングをすることがありますが、その時に、意識していることのひとつが、「固定概念(レッテル、思い込み、前提)を外すということです。今回の記者さんのように、「一般的に」とか「常識」「普通は」「みんな」とかいうフレーズが出たら要注意です。「一般的に、入社5年目ならこれくらい出来ないとだめじゃないですか」「これって営業の常識ですよね」「みんな、彼には不満を持っていると思います」などなど。そんなフレーズが出たら、「出た!」と思って、すぐにこんな風に問いかけるようにしています。

  • 「それって本当にそうなんですか?」
  • 「具体的にどのようなことがあってそう思う?」
  • 「そう断定する理由は?」
  • 「何故そう思う?」
  • 「今までに実際やってみた?」
  • 「みんなって誰ですか?」
  • 「普通ってどういうこと?」
  • 「AかBかの二者択一で考えているんですね」
  • 「◯◯はこうあるべきだ、と考えてるんですね」
  • 「決めつけているように聞こえたけど、どうかな?違うかな?」

丁寧にそんな対話をしていると、メンバーも一旦、固定概念が外れて、違う視点が出てきたり、他人主語で話していたのが、がらっと自分主語に変わったりすることがあります。

ちなみに、「一般的」「常識」「普通」「みんな」みたいなフレーズの他にも、対話の中でふわっとした言葉が出てきたら、掘り下げて具体化する問いかけをしてあげるのが、コーチングとしては有効です。今回のような「成功/失敗」、「簡単/難しい」「自信」「会社に貢献」「自分らしく」「成果」などなど。こんなフレーズたちが出てきたら、

  • 「その『うまくいく』『やさしい』ってどういうことなの?」
  • 「何があれば『自信』が持てる?」
  • 「『自信』ってどんな気持ち?」
  • 「『会社に貢献』ってどういうこと?」
  • 「『自分らしく』ってどういうこと?もう少し具体的に教えて」
  • 「『成果を出しまくる』って、今が何%で、それが何%になるイメージ?」

などと問いかけています。

この記者さんは、何が目的で、今回のロケット試験機の打ち上げ中止を「失敗」と結論付けたかったのか。それは、あなたにとってどういう意味があるのか。コーチングして聞いてみたい気がします。

ちなみにこのような考え方は相手に対するコーチングだけでなく、自分に対するセルフコーチングでも有効です。自分の中にコーチ役の自分、リトルでじきちを作って、視野が狭まってるな、行き詰まってるな、と感じた時に上記のように問いかけると良いです。

失敗を是とする

今回の事象に「失敗」という言葉が適切かどうかはもう置いておくとして。今回の件を通じて私が改めて考えたのは「そもそも基本的に、失敗を是としたいなぁ」ということです。「失敗は成功のもと」はじめ、失敗を是とする格言名言は沢山ありますが、失敗を攻める格言名言は私は知りません。失敗を恐れていては進歩が無い、と歴史が教えてくれているようですね。

特にこの予測不能で「何が起こっても変じゃない」ミスチルesならぬVUCAな時代(Volatility:変動性 / Uncertainty:不確実性 / Complexity:複雑性 / Ambiguity:曖昧性)においては、失敗を恐れていては無難なことしか出来ず、良いアウトプットを出すことは出来ないでしょう。だからこそ、小さくトライ&エラーを繰り返しながら前進していく、アジャイルのような考え方が最近よく取り上げられるのだと思います。私自身、この1月からの新組織でも、「失敗」や「朝令暮改」を恐れずに取り組んでいるつもりです。

失敗を認め、次に活かす

「失敗してもええじゃないか」と言っているのではなく、うまくいかなかったことを認め、次に活かすことが大切です。「過ちを改めざる、これを過ちという」by孔子(論語)「問題や失敗への対応の仕方は二つある」byジャック・ウェルチ(実業家)。手を挙げてPKを蹴って外したことを責める人は少ないでしょうが、練習せずに2度3度外すと、蹴らせてはもらえないでしょう。

マーケッター対象に講演をする機会をいただくのですが、具体例として少し前までは自分の成功事例をあげて説明していましたが、最近は失敗事例をあげて、聴講者に失敗の原因を考えてもらうようなワークをしたりと、失敗事例をメインに話しています。何故そう変えたかというと、経験的に、成功からよりも失敗からの方が汎用性がある学びが得られると思ったからです。野村監督も「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と仰っていました。その通りで、「絶対に」成功させる要因は無いけれど、「絶対に」成功可能性を下げる要因というのはあるので、次に活かせる学びが大きいのだと思います。

失敗に関するおすすめ書籍

ちなみに、失敗に関するおすすめの書籍がこちら。

第二次大戦の日本軍はこれは誰しもが認める「失敗」だと思います。戦争を仕掛け、敗けるべくして敗けた、その複数の真因に迫っており、それらは現代に通ずるものばかりです。

  • 環境変化に対応して自己否定をし、変わることが出来なかった。これまでの成功経験に拘りすぎた
  • 曖昧な目標設定と指示。上層部は現場を知らなかったし、現場は上層部の考えを理解出来ていなかった
  • 長期的視点、ビジョン、グランドデザインの欠落
  • 臨機応変に対応できない、備えの薄い戦術オプション。最悪の場合に備えていなかった
  • 他国に比べて情報弱者であり、誤情報に基づく作戦を練っていた
  • 思い込みで結論ありき、課題対策の一貫性欠如
  • 練習の為の練習。勝ち目の薄い、不要な掛け
  • 心理的安全性の欠落。ネガティブ意見は排除された
  • 成功にも失敗にも学ばなかった ・・・などなど

特に組織やPJのリーダーの方にはおすすめです。当時のソ連司令官は、「日本軍の下士官兵は勇敢頑強だが、高級将校は無能」と語ったそうです。リーダーが見誤ると壊滅的な被害に繋がる。身に沁みます。

一生懸命な人に敬意を払う

さらに改めて気をつけたいと思ったのは、一生懸命な人に常に敬意を払う自分でいたいということです。一生懸命頑張っている人をすました顔で論破、みたいなのって、かっこ悪いと私は思います。私自身は勿論、自分の息子にも、そんな大人にはなってもらいたくないと思います。

頑張りを笑われた時の対処法

とはいえ、渦中で頑張ってもがいている最中、遠い涼しい立場から、べき論や正論のアドバイスや、表層的な評論をもらってうざいと思った経験、皆さんもあるのではないでしょうか。そんな時、私は次の5つのどれかをその時の気持ちに応じてこっそりやったり心の中で口ずさんで乗り切っています。馬鹿にするなかれ、けっこう気持ち切り替わります笑。

  • 「いうよねーーー!!!」とはるな愛ばりに叫ぶ
  • 「野党!」と霜降り粗品のポーズで突っ込む
  • 「ファイト!闘う君の唄をー闘わない奴らが笑うだろうーファイト!」と中島みゆき「ファイト!」をエンドレスに口ずさむ
  • 「人のすることに 文句ばかりつける ノンキオンナだきゃ避けて通りたいけど、自分だって悩める人の心情 理解した気で 余裕しゃくしゃく!」とBz「ZERO」ラップ部分を口ずさむ
  • 「人の庭 荒らす暇あったら てめえの花を咲かせろや」と「NANA」ヤスばりにカッコつけてつぶやく

人の心情に想像力を働かせる

2時間にも渡る会見冒頭、JAXAの方が感極まって涙されていました。途中には上記のようなやりとりもあったのですが、後半、別の記者さんからの「失敗ではないと仰ったが、涙を見せた。失敗ではないのに?」という質問がありました。小学生の息子が塾で習っている国語の考え方に、背景・出来事・心情・行動に分けて考えようというものがあります。質問しなくても、わかることではないか?と思いました。JAXAの方の答えは、「今日を楽しみにしてくれている方が多くいた。特に、楽しみにしていた子どもたちに対して・・・ごめんね、という気持ちです」

背景:ロケット打ち上げを子どもたちはじめ、多くの人が楽しみにしていた

出来事:土壇場で打ち上げを中止した

行動:会見冒頭で思わず涙ぐんだ

心情:楽しみにしていた人たちに申し訳ない ・・・、正解でした。

JAXAの方は、きっと今回の出来事を次に活かし、描いておられる目標に対して、いつの日か必ず成功してくれると思います。応援したいと思います。

長くなりました、ではまた!