こんにちは！でじきちです。
皆さんは、アイデアを考えるのに、いくつか発想法があるのをご存知ですか？例えば「関係ないもの同士をくっつける強制結合」や、「オズボーンのチェックリスト（転用、変更、拡大・縮小など）」などなど。今日は、「鬼滅の刃」の映画を観に行って感じた、ポジティブアイデア発想法のご紹介です。
<目次>
「鬼滅の刃」の映画を観て驚いた
皆さんは「鬼滅の刃」お好きですか？私は大好きです。ずっと息子達が読みたいというのを、残酷だって決めつけて読ませてなかったんですが、一昨年のクリスマスに、サンタさんが全巻オトナ買いして届けてくれました。それを私も一緒に年末一気読み、するとなんと面白く、なんと勇気をもらえる漫画なんだと！残酷なんてことなくて、なんと優しい鬼退治だと！ドはまりしました。それ以来、やれ大観覧車だとかナイトウォークだとか、いろんなイベントにも息子達と一緒に行って楽しんでます。勿論、今回の映画も行ってきました。
そこで、ひとつ驚いたことが。「遊郭編ラスト2話＋刀鍛冶編初回」の建て付けだとは観に行く前から知っていたのですが、遊郭編が、完全にTVアニメそのまんまだったんですよね。各話のオープニングとエンディングもアニメそのままで、スタッフや声優さん達のクレジットも律儀に都度流れる。シュールだなと。観る前は、なんだかんだで映画用にアレンジされてるんだろうと思ってた。でも、完全にアニメそのままだったのです。
じゃあ満足度はどうだったかというと、大満足でした。大画面・大音響での戦闘シーンの迫力たるや！他方、妓夫太郎と蛇姫のシーンは大きな館内に静寂が沁みる。テレビで観てたのとは比べられない。本当に凄かった。ストーリーも全部把握しているのに、改めて凄く感動しました。
今回みたいなTVアニメ編集版みたいな建付けだと、通常は都市郡だけとかミニシアターでの公開が多い中、全国で派手に公開して、果たしてどうなるのかと思っていました。蓋を開けてみれば公開3日で興行収入11億円、最終40億円強ということで現時点、2023年公開映画の中でNo1。結果は大成功と言えるでしょう。
そこで、思ったんです。これはおおいなる開き直りの勝利だなと。「アニメと全く同じ内容でもかまわない！」と。
ポジティブアイデア発想法「メラキア」
「メラキア発想法」は商品開発の大家、梅澤伸嘉先生が提唱されました。「ネガティブ（窮地、障害、問題）があってもかまわない。ともすれば、ネガティブがあった方が良い」と、普通ならネガティブと思われることをポジティブ変換するアイデア発想法です。
例えるなら…
【鳴かぬなら 殺してしまえ 時鳥】by信長
【鳴かぬなら 鳴かせてみせよう 時鳥】by秀吉
【鳴かぬなら 鳴くまで待とう 時鳥】by家康 は有名ですが、
【鳴かぬなら 鳴かなくてもよい 時鳥】byメラキア あるいは
【鳴かぬなら 鳴かないのがよい 時鳥】byメラキア といったところ。
「鳴かなくても、見た目と動きが好きなお客様には全然問題ないじゃん」と開き直ったり、「鳴かないので、うるさくないですよ。マンションでも飼えますよ」と訴求して、ポジティブに宣伝しちゃう、みたいな。
実際の事例では、
禁煙効果が実は無い
⇨いいじゃん、その時だけでも代わりになれば！「禁煙パイポ」
シールの粘着力が弱い
⇨使い物にならない？いや、それがいい！「ポストイット」
シャンプーのスースー刺激が強すぎる
⇨いや、それが好き！「トニックシャンプー」
などなど、このメラキア発想で生まれたヒット商品は沢山あります。
今回の鬼滅の刃の映画になぞらえれば、
アニメと全く同じ内容 ⇨ミニシアターが精一杯？いや、映画館であの迫力を感じたい鬼滅ファンは全国に一杯いるから、その期待に応えよう！といった感じ。
鬼滅の刃のTVアニメは元々映像や音にとても拘って、ヒト、カネ、時間のリソースをかけて作られていると聞きます。映画化にあたり、映画用の脚本を書きおこしたりすると、さらにまた上記リソースがかかります。今回の「アニメそのまんま」は、収益に大きく貢献しているはずです。今回の成功事例から、今後このパターンで公開するアニメ映画も新たに出てくるかもしれません。普通なら、企画会議で「アニメと全く一緒じゃあかんだろ」と却下されそうなところを通したのがすごいと感じました。背景には、関係者にこのメラキア発想の素地があったのではと思います。
メラキア実行する為に大切なこと
メラキア発想を実行する為に大切な要素が3つあると思っています。
①メラキアを理解している
名前を知らなくても、このような発想が、ふざけているのでなく、立派な発想法で、成功している商品も沢山あることを関係各位が知っていたり、理解しているのが望ましいです。
②心理的安全性がある
メラキア発想は、今までの常識から「それじゃあかんやろ」と否定されがちです。「はぁ？アニメそのまんま？そんなの良いわけないだろ」と。でも、「意外に良くね？」「それ、ありかも」と皆がすぐに否定せずに話を拡散していく雰囲気が大切です。
③解像度高く顧客を理解している
ターゲットのお客様の気持を正しく理解していないと、独りよがりな開き直りになってしまいます。鬼滅の刃ファンとしての私の想いは、「鬼滅の刃のストーリーは完璧。あれは逆に変なアレンジとかしてほしくない。アニメは原作に忠実で、完成されていた。テレビでも凄かったあの映像を、映画館の迫力で観れるなら、十分お金を払って観に行く」。私がファンの最大公約数では無いかもと思いますが、そんなお客さんが沢山いたから、今回の映画はアニメそのままだったにも関わらず、大成功したのでしょう。今までの当たり前を大胆に壊すなら、解像度の高い顧客理解が絶必です。
「マッサージとかシャンプーとか要らないじゃん！安くちゃちゃっと散髪できればさ！」という発想のQBハウス、花屋定番の法人向け胡蝶蘭などを扱わず、個人のデイリーユースに絞った青山フラワーマーケットなども、「何を顧客が求めていて、何を切り落としても良いのか」という顧客理解に基づく、気持ちの良い割り切り＆開き直りがアイデアの背景にありますね。このあたりはいわゆるブルーオーシャン戦略とも繋がるところがあり、またいつか書きたいと思います。
日常でもメラキアは使える！
今回は商品やサービス開発の事例で説明していますが、これって日常でも使える発想法。
ギリギリのタイミングで電車の扉が閉まって乗れなかった！
⇨乗れなくてもOK、次のが来るまでに降り口に近い乗車位置まで移動しておこう
今週末はどっか遊びに行こうと計画してたのに、雨が降った！
⇨雨でもいいじゃん、むしろいつもなら行かない、美術館でも行ってみるか！
さぁ、昼ごはん作ろうと思ったら、冷蔵庫に何もない！
⇨何もないならそれでよし、節約で一食抜いて晩ごはん奮発するか！
子供がコロナに感染して、しばらく家族全員在宅を余儀なくされた！
⇨症状が重くなくてよかった。普段できない、家族イベントを家の中でやろう！
以前、「起こった出来事をどう捉えて、どう反応するかを選択するのは、人間のおおいなる自由だ」といった内容の記事を書きました。それと根っこは同じですが、もっと具体的に、簡易で良いので実行のアイデアまで落とし込む発想法がメラキアかな、と思います。
ちなみに、勘の良い方はもうお気づきかもしれませんが、「アキラメ」を反対にしたのが「メラキア」です。生前の梅澤先生は、とっても愛嬌のある方でした。メラキア発想法を含む、「梅澤理論」と呼ばれる商品開発に関する書籍を何冊も書かれていますが、下記は特におすすめです。
今日は、ポジティブアイデア発想法「メラキア」のご紹介でした。
ちなみに映画の遊郭パートは再放送だったわけですが、上弦集結と刀鍛冶のパートは4月からのアニメの先行ということで初見でした。劇場で観る無限城の凄かったこと！小さい頃にディスニーランドのホーンテッドマンションに初めて入った時の驚きや感動を思い出しました。まるでアトラクションです。アニメが楽しみです！
ではまた！
文中登場する、「解像度高く顧客を理解する」について書いたこちらの記事も、ご興味持たれたら是非のぞいてみてください。
「起こった出来事をどう捉えて、どう反応するかを選択するのは、人間のおおいなる自由だ」といった内容について書いたこちらの記事も、ご興味持たれたら是非のぞいてみてください。
